読んだ本とかのまとめ(2023年1月)

読んだ本

『歩道橋シネマ』:短編集. 『EPITAPH東京』のスピンオフである「悪い春」が現実になりませんように. 「春の祭典」は,準備中のバレエ小説の習作とのこと. 恩田陸の芸術系作品(『チョコレートコスモス』とか『蜜蜂と遠雷』とか)は,作者の鑑賞時の感動がダイレクトに言葉に変換されているような臨場感がある. バレエ小説本編(?)が楽しみ.

ピエタとトランジ』:主人公ピエタの友人トランジは,行く先々で殺人事件(しかもグロめ)を誘発する特殊体質をもっている. よって全体的に人がよく死ぬし,揃いも揃ってろくな死に方をしない. それでも,主人公たちのキャラクターのおかげもあってか,あまり陰惨な雰囲気を感じない. トランジみたいな友人がいると人生退屈しなさそう.

『ミュージカルの歴史』は,「なぜ突然歌いだすのか」という副題につられて手にとったのだが,歌劇の歴史をたどりつつ現代ミュージカルまでの一通りの流れを知ることができてよかった. もっとも今までミュージカルを見たことがない(せいぜい映画の『レ・ミゼラブル』程度)ので,作品解説を読んでもいまひとつピンとこないのが悲しい.

『紙の月』の登場人物は,約一億円を横領した主人公を筆頭に,自覚なく金銭感覚が狂ってしまっている人だらけで,まっとうな金銭感覚の難しさを痛感させられる. 自分もいつかそうなる(もうなっているかもしれない)と思うとなかなか恐ろしい.

ケン・リュウは,『紙の動物園』(文庫版)を読んでファンタジーっぽい作風の人だなと思っていたが,『紙の動物園』と今回読んだ『もののあはれ』はそれぞれファンタジー編・SF編となるように構成されているらしい. 『もののあはれ』はSF編とはいうものの,やはり全体的にファンタジーで詩的なセンスが漂っている気がする. 人ならざる存在が描かれたSFが好きなので,「選抜宇宙種族の本づくり習性」や進化した人類を描く「どこかまったく別な場所でトナカイの大群が」「波」あたりが特によかった.

『麦酒の家の冒険』:『九マイルは遠すぎる』ばりの安楽椅子探偵を長編で行うという挑戦らしい(あとがきでの作者談). 自分が酒を嗜まないのもあって,ビール × 学生 × 本格ミステリという組み合わせになんだかファンタジー的な憧れを感じがち.

街道をゆく 愛蘭土紀行 1』:アイルランド紀行とはいうものの,本書の半分くらいは道中のイギリスの話だったりする.スウィフト・ジョイスベケットといったアイルランドを代表する作家たちの話,英国国教会アイルランドカトリックの対立,大英帝国という強国に接するがゆえの悲哀など,紀行文のなかに差し込まれる余談のなかに学びが多い.

『メガロマニア』:こちらも紀行エッセイ.中米のマヤ文明遺跡という非日常感に満ちたロケーションもあって,多分にファンタジー感がある.作家の空想を疑似体験している感覚になった.