読んだ本とかのまとめ(2023年5月)

読んだ本

『チャリング・クロス街84番地』:ニューヨークの脚本家・ヘレーン(本作の編著者)とロンドンの古書店との二十年にわたる書簡集。海を越えてまで古書を郵送してもらうというのにまずびっくり。やりとりを重ねるうちにフランクさが増していくヘレーンに対し、古書店員はどこまでも紳士的でプロフェッショナルな文面が貫かれているのも面白かった。見識深い古書店員に本を見繕ってもらう経験、一度でいいからやってみたい(そもそも古書店を訪れたこともほとんどないけれど……)。

『人生論ノート』:「虚栄について」あたりが面白かった。雨宮吾郎さんも「この世の大抵はフィクションである」って言っていたし。全体的に思っていたよりポジティブ思考な本だったので意外。

『日本の水族館五十三次』:「イラストで読む建築」と銘打っているだけあって建築的な観点からの水族館解説が新鮮。水槽の中だけでない水族館の魅力が活き活きとしたイラスト付きで描き出されていて、水族館めぐりの旅に出たくなった(せめて都内の水族館くらいは……)。

『タマゴマジック』:仙台を舞台にした都市伝説小説。恩田陸の作品は「都市」を舞台にした作品が多いが、恩田陸の出身地である仙台が舞台になっているのは珍しい気がする。都市伝説をテーマにしつつSFっぽさもありミステリっぽさもある安心感。

泣き虫弱虫諸葛孔明(第壱部)』:あまりにも面白すぎる。孔明劉備を輔佐するようになるまでを描いた歴史小説……のはずなのだが、著者の勢い溢れる秀逸な文体と卓抜したユーモアのセンス、完全に歴史小説の枠から飛び出している。

『死ぬまでに一度は訪ねたい東京の文学館』:東京にこんなに文学館があるとは知らなかった。文学館めぐりの旅もいつかやってみたい。

アホウドリの迷信』:英米文学の短編集。全体的に、体調が悪くて熱っぽいときにみる夢の中に迷い込んだような気分になる。詩的な文章表現も秀逸。原文だとどんな感じなのか気になる。表題作の「アホウドリの迷信」や、「アガタの機械」あたりのちょっと冷めた恐怖感が好きだった。