読んだ本とかのまとめ(2024年1月)
読んだ本
- 恩田陸『土曜日は灰色の馬』
- ロバート・A. ハインライン『夏への扉』
- ロレンス・ダレル『アレクサンドリア四重奏 マウントオリーヴ』『アレクサンドリア四重奏 クレア』
- 河崎秋子『鯨の岬』
- 内田百閒『東京日記』
『アレクサンドリア四重奏』:読み切った感。文化も価値観も交錯する土地と時代を描くとなると、これだけの分量が必要だったのも頷ける。ミステリ・歴史小説・官能小説・幻想文学・詩といった要素がパノラマ島的に披露され、作家の手練を感じた。
『東京日記』:日常のそこかしこに幻想の世界が顔をのぞかせてくる。微熱がある夜に外をそぞろ歩きしているとこういう体験になりそう。たまたま『アレクサンドリア四重奏』に続いて土地が書名に冠されている作品を読んだが、文化の交叉点であるアレクサンドリアと極東の島国の都市だと、まるで様相が異なっていて面白い。
読んだ本とかのまとめ(2023年12月)
読んだ本
- 大内田史郎『東京建築遺産さんぽ』
- 恩田陸『『恐怖の報酬』日記』
- フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』
- 柳宗悦『民藝とは何か』
- エルヴェ・ル・テリエ『異常【アノマリー】』
- 小田達也『見所がわかる茶の湯のやきもの鑑賞入門』
- 尾崎正明(監修)『すぐわかる画家別近代日本絵画の見かた』
- 尾崎翠『第七官界彷徨・瑠璃玉の耳輪 他四篇』
- 平松洋子『夜中にジャムを煮る』
- 五木寛之『金沢あかり坂』
- ロレンス・ダレル『アレクサンドリア四重奏 ジュスティーヌ』『アレクサンドリア四重奏 バルタザール』
『恐怖の報酬日記』:作者の飛行機恐怖症、共感できるところしかなかった。イギリス・アイルランドの紀行文といえば司馬遼太郎の『街道をゆく』を以前読んだが、歴史的背景の解説が多めの司馬遼太郎と風景や情景メインの恩田陸だと、視点も違っていて面白い。
『民藝とは何か』:日本民藝館に行ったので読んだ。やきものの鑑賞にあまりにも疎くて要点を掴めなかったので勉強していきたい……。
『異常【アノマリー】』:あらすじを見てランゴリアーズ的な話かと思ったら全然違った。2021年の世界が舞台になっているので、世界の反応(特に各国首脳)のリアリティ度が高い。現実になってほしいタイプのSF。
『金沢あかり坂』:五木寛之、『戒厳令の夜』しか読んだことなかったので、重量級のゴツめの作品なイメージがあったが、本作は比較的軽め。
『アレクサンドリア四重奏』:2023年に読もうと思っていた本ランキング1位。年がかわる前に読まねばと思って読み始めたが、2巻までしか終わらなかった。アレクサンドリアには当然行ったことはないが、多国の文化が入り混じった都市特有の空気を感じられてよかった。登場人物の思考回路はあまり理解できなかったけれど……
読んだ本とかのまとめ(2023年11月)
読んだ本
- 高階秀爾『20世紀美術』
- 古野まほろ『背徳のぐるりよざ セーラー服と黙示録』
- 恩田陸『終りなき夜に生れつく』
- 『彼女。 百合小説アンソロジー』
- 米澤穂信『本と鍵の季節』
- 柴田勝家『走馬灯のセトリは考えておいて』
- 倉方俊輔『東京レトロ建築さんぽ 増補改訂版』
- エドガー・カバナス、エヴァ・イルーズ『ハッピークラシー 「幸せ」願望に支配される日常』
- ジョージ・ドーズ・グリーン『ケイヴマン』
- 永山則夫『無知の涙』
- 穂村弘『にょっ記』
『走馬灯のセトリは考えておいて』:「ぶちギレ金剛」というワードが普通に出てきてびっくりした.表題の「走馬灯のセトリは考えておいて」が印象的.バーチャルアイドルが死後復活できる技術が現実に存在したら,倫理的に割り切れない気持ちになりつつ喜んで受け入れてしまいそう.
『東京レトロ建築さんぽ 増補改訂版』:庭園美術館やカトリック神田教会に行ったので,他のレトロ建築も見てみたくなった.増補改訂を待つ間に取り壊されたのか,「現存せず」になっている建物もそこそこある.恩田陸の『スキマワラシ』に出てきた高輪消防署二本榎出張所も紹介されていた.いつか行ってみたい.
『ハッピークラシー』:Google日本語入力だと何度入力しても「ハッピー暮らしー」になってしまう.新自由主義思想に毒された幸福追求に踊らされるよりも社会正義にしっかり取り組むべきという著者の意見,それはそうなんだろうけど社会全体の共感は得られなさそうなのが悲しい.
『無知の涙』:東京都写真美術館で上映されていた『略称・連続射殺魔』を見て気になった.自分の罪を自覚している死刑囚の思想,世間の束縛を離れた自由さがあって面白い.社会へのルサンチマンや承認欲,他責思考が滲み出る文章を見ると,殺人者の人生も紙一重だよなと思う.日めくりカレンダーにして部屋に飾っておきたい(自戒を込めて).
『にょっ記』:梟書茶房に行ったときに買った.期せずして日記っぽい形式の本を続けて読むことになった.奇しくも『にょっ記』の中で週間マーダーケースブックを読んでる話が出てきていたので,意外と影響を受けているのかもしれない(?)
読んだ本とかのまとめ(2023年10月)
読んだ本
- 恩田陸『なんとかしなくちゃ。 青雲編』
- 佐藤究『爆発物処理班の遭遇したスピン』
- 藍銅ツバメ『鯉姫婚姻譚』
- エリザベス・ボウエン『ボウエン幻想短篇集』
- 中村圭志『宗教図像学入門』
- 柏木麻里『もっと知りたいやきもの』
- 宇野碧『レペゼン母』
- 原田マハ・高橋瑞木『現代アートをたのしむ』
- 吉岡乾『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』
- 中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』
- アネ・カトリーネ・ボーマン『余生と厭世』
- 佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』
『なんとかしなくちゃ』:面白かった。恩田陸の作品、傍から見るとちょっと変わっているけど筋は通っているキャラクターがたまに出てくる(『ドミノ』の田上優子とか『錆びた太陽』の財護徳子とか)。とはいえそういうタイプの人物が主人公になって、人格形成の様子が語られていくのは珍しい気がする。地の文のクセの強さや、一代記の序盤で一区切りがつけられているあたり、酒見賢一リスペクトを感じる。
『爆発物処理班の遭遇したスピン』:SF短編集だと思ったら重めのSFホラーだった。
『鯉姫婚姻譚』:孫一郎によって語られる御伽噺が不穏な空気を漂わせつつも、孫一郎とおたつのキャラクター性のおかげか、終始平和で穏やかな雰囲気。自宅の庭に人魚が住んでいてほしい人生であった。
『ボウエン幻想短篇集』:今月は期せずして怪異風味の本ばかりになっていた……。本作はゴーストストーリー多めという触書ではあったが、実際のところ幽霊が源泉の恐怖より、人生におけるささやかな恐怖が描かれている感じ。
『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』:不満や悩みを抱えつつも研究生活を続けられる動機の強さが羨ましい.
『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』:面白いとは思ったが,そもそもそこまでギチギチに時間を詰め込んでまで仕事するくらいならさっさと死んだ方がマシでは……?
『余生と厭世』:定年間際くらいになったら仕事や人生への向き合い方もまた変わってくるのかもしれない.そんなに長生きはしたくないが.
『喜べ、幸いなる魂よ』:やはり出家が人生のすべてを解決する.
読んだ本とかのまとめ(2023年9月)
読んだ本
- 恩田陸『訪問者』
- 中島京子『夢見る帝国図書館』
- 錦織一臣(監修・編著)『大人のための水族館ガイド』
- コルム・トビーン『マリアが語り遺したこと』
- 村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』
- 谷崎潤一郎『文章読本』
- 佐藤岳詩『「倫理の問題」とは何か』
『夢見る帝国図書館』:子ども図書館には行ったことがないが、上野の方に住んでいるうちに行っておけばよかった。図書館に彩られる人生にもいろいろな形があるものだなと実感。
『マリアが語り遺したこと』:神格化された存在にはやっぱり神性を求めたくなってしまうよね、という点では信徒サイドにも若干の共感を覚えてしまった。読む人によってかなり感想が変わりそうな作品。
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』:表題作をはじめ、共感はするけど正視しづらい作品が並ぶ。世の中、心のなかに魔法少女を潜ませて生きている人もたくさんいるのかもしれないなと思うとなもみますね。それくらいで丁度いいんだろうなという気持ちにもなる。
『文章読本』:三島由紀夫に比べるとマイルドだった。文章力は結局のところセンスで決まるという話、谷崎潤一郎にされるとぐうの音もでない……
『「倫理の問題」とは何か』:同著者の『メタ倫理学入門』も読んだはずで、トピック的にはだいぶ被っているはずなのに、ほとんど何も覚えていなかった。倫理学は分野として興味があるので勉強していきたいのだが、散漫に本を流し読む程度では身につかない……。ちらっと紹介されていたロボット倫理学が面白そうだった。
読んだ本とかのまとめ(2023年8月)
読んだ本
- 辻村深月『ツナグ 想い人の心得』
- 恩田陸『六月の夜と昼のあわいに』
- ソン・ウォンピョン『アーモンド』
- 日本SF作家クラブ編『AIとSF』
- 五十嵐雄策『紅蓮の剣姫』
- ヨウスケ『美しい日本の廃墟』
- 深緑野分『スタッフロール』
『ツナグ』:前作を読んでから10年以上経つということにまずびっくり.そもそも前作の内容もうろ覚えだったので,この機会に読み直して懐かしい気持ちになった.辻村深月の作品の中でも穏やかな気持ちになれる作品.
『六月の夜と昼のあわいに』:詩をテーマに短編を書くというなかなか見ない取り組み.詩がそのまま外挿されているような透明感ある手触りがよかった.
『AIとSF』:他人事とは思えない話もところどころあったりなかったり.野崎まどの「智慧練糸」が反則級に面白かった.
『アーモンド』:これはハッピーエンドだったんだろうか.主人公が失感情症なだけあって,淡々とした語り口が心地よかった.
『紅蓮の剣姫』:いい話だった…….特に終盤の高咲侑さんの言葉.
『スタッフロール』:嫉妬するだけの情熱があり,何やかんやで人から認められるだけの才能をもって仕事に打ち込めるのが羨ましい.